ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ファ・コーフィー・パウブ(Ffa Coffi Pawb) 歌/ウェールズ語
 ファ・コーフィー・パウブは、80年代後半から90年代頭にかけて、地元ウェールズで活躍したバンドである。解散後、メンバーの半分がスーパー・フューリー・アニマルズを結成し、1人がゴーキーズ・ザイゴティック・マンキのメンバーになったことで、現在は知られている。

 北ウェールズのスノードニア山脈のお膝元、ベセスダ(Bethesda)で育ったグリフ・ライス(Gruff Rhys)(Vo&G)は、短期間クリエイション・レーベルと契約したバンド、エミリー(Emily)が解散した後、同じ学校に通っていたロードリ・ピウ(Rhodri Puw)(G)らとともに新しいバンドを86年に組む。このバンドが、ファ・コーフィー・パウブである。活動の拠点は、地元ベセスダとなった。
 活動を始めてから1、2年後に、彼ら2人にダフィズ・エヴァン(Daffydd Ieuan)(Dr)(1969年バンゴール生まれ)、デウィ・エムリン(Dewi Emlyn)(B)を加えた4人組としてバンドの形が定まった。

 その音だけならば英語で卑猥に聞こえる、「皆の珈琲豆」("Everybody's Coffee Beans")と名乗った彼らが目差したのは、アナーキーなパンク・インダストリアル・バンドだった。だが、次第にウェールズ語でポップスを演奏する、と方向転換する。
 彼らはライヴをする傍ら、自主制作テープを制作、バンゴール周辺のパブで売ることで彼らの活動は始った。86年には、自身のレーベルSiwgwrからTorrwyr Beddau Byd Eang Cyf(86年)を出している。

 彼らの活動は、連続するツアーに明け暮れた。彼らの先輩にあたるアンレーヴンの助けも借り、ウェールズ中をツアーで回った。その一方で、ロンドン(2回のみ)やオランダとフリースランドでも演奏した。ダフィズによれば、彼らはリハーサルもせず、最初の4年間は自分たちの機材も一切持っていなかったという。また、常に酔っ払っていた――エール好きのウェールズ人を地で行っていたわけだ――にも関らず、彼らは注目を集め、テレビ局S4Cの番組「フィデオ9」(Fideo 9)に出演するようにもなる。その合間を縫うように、アンクスト・レーベル(Ankst)に3枚のスタジオ・アルバム――Dalec Peilon(88年)、Hei Vida!(92年)、Clymhalio(91年)――を残している。同じくウェールズのバンドThe Crumblowersとは、カーディフのthe Square Clubで88年8月3日に録音されたライブ・アルバム(テープのみ)Angylionを制作した。この他にも、数多くの12インチ・シングルやフレキシ・ディスクを残し、彼らは93年に解散した。

 解散後、グリフとダフィズはスーパー・ファーリー・アニマルズを結成し、ロードリは脱退したギタリストの代りにゴーキーズ・ザイゴティック・マンキに加入。デウィはスーパー・フューリー・アニマルズやゴーキーズ・ザイゴティック・マンキ、モグワイ(Mogwai)などのツアー・マネージャーとして忙しく活躍している。



[アルバム(選)]
Am Byth (2004) (Toy's Factory / TFCK-87354)
 ファ・コーフィー・パウブの86年から92年までの作品から製作された、現在、唯一のCDが本作である。パンクだと伝えられてきた彼らの音楽だが、ここに収録された音を聴く限りでは、音はポップス。いかにも80年代といった太いスネアの音は、流石に時代を感じさせるが、ニュー・ウェイブに軽くヒネリを加えたようなサウンドは、10年以上経った今聴くと新鮮でもある。直球勝負のような明るい曲ばかりだが、所々で後のスーパー・フューリー・アニマルズで開花する、捻れたギターやコーラスの芽が聴かれもする。中でも16曲目後半の、シンプルなベースの刻みの上にのる、ややサイケがかったギターとピアノは印象的だ。地元ウェールズで人気があったとはいえ、本作のリリースは解散から12年経過してのことであり、奇蹟といっても良いほどのリリースだ。更に驚いたことには、ボーナス・トラック付の日本盤が制作されている。良い時代になったものだ。




[リンク]
 ankstmusik ... ファ・コーフィー・パウブが3枚のアルバムを出したウェールズのレコード会社。簡単なバイオグリフィーあり。オン・ライン・ショッピング可能。

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ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2004-2009: Yoshifum! Nagata








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