ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズ(The Sonic Executive Sessions) 歌/英語
 Duffyが火がついたのは、インターネットの音楽ダウンロードからだった。現在、音楽のダウンロードは問題も引き起こす一方で、あまたの未だ世に知られぬ音楽家が世に出る方策のひとつにもなっている。かつてインディーズ・レコードとその専門店が多くの音楽家に門戸を開いたように、今はインターネット媒体の音楽市場が、彼らに自身の音楽を世に知らしめるチャンスを与えている。このザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズも、インターネット媒体の音楽市場から火がついたバンドである。

 メンバーはクリスチャン・フィリップス(Christian Phillips)(Vo, g & keys)、ライアン・アストン(Ryan Aston)(Dr)、ティム・ハミル(Tim Hamill)(Engineer & g)。彼らが作った音楽がMyspaceを通じて楽曲配信され、口コミでその音楽が伝わって行った。

 トリオ編成ながら、主に楽器を演奏するのはクリスチャンとライアンのふたり。それというのも、ティムはウェールズはスラネッスリ(Llanelli)にSonic-Oneと呼ばれる音楽用スタジオを構えるオーナーで、そこでスタジオ・ミュージシャンとして数々の録音にかかわってきたクリスチャンとライアンと一緒に作った音楽が、ザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズとなったのだ。そのため、これ(2011年2月)までにザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズとしてはライヴ演奏は一切行っていない。

 クリスチャン・リフィップスはスゥオンジーに生まれ育った。これまでに15年もの長い間、プロのミュージシャンとして活躍してきた。クリスチャンの活動は幅広く、スタジオでの演奏家としてはもとより、作曲家、編曲家、歌手、音楽監督としても活躍している。本人の弁によれば、仕事の大半はテレビ番組の音楽とのこと。2009年にはS4Cの子供向けウェールズ語のテレビ・ドラマ『ウィルのクリスマス・リスト』("Rhestr Nadolig Wil")の劇中音楽(Caryl Parry Jonesとの共作)でイギリス映画テレビ芸術アカデミーBFTA(British Academy of Film and Television Arts)の最優秀子供テレビ部門で賞を勝ち取った。またニューヨークで開催際されたキッズ・スクリーン賞(Kids Screen Awards)にもノミネートされている。

 クリスチャンはまた、Duffyやブリン・ターフェルらウェールズ勢をはじめ、Allesi Brothers やThe London Community Gospel Choir、Steve Balsamoなど数多くの音楽家/音楽集団のために演奏をしたり、編曲を行ったりしている。

 ライアン・アストンとクリスチャンの付き合いは長い。プロの音楽家として活躍する以前は、ビーチ・ボーイズのような音楽絵を演奏するバンドThe Millionairesで一緒に活動していた。現在でもイーグルスのトリビュート・バンド、Ultimate Eaglesで一緒に演奏している。この2人がウェールズはスラネッスリのSonic-Oneスタジオで、そのオーナーであるティム・ハミルと一緒にスタジオの空き時間に曲を録音したのが、ザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズの始まりだった。最初に書いた曲は、「セヴンティーン・オーヴァー・ユー」(『2011』収録)だったという。以来、彼らはスタジオの空きを利用し、曲を書き、録音した。その発表媒体として選ばれたのが、ソーシャル・ネットワーキング・サイトのMyspaceだった。

 ここで発表した曲が好評を博した。口コミで彼らの楽曲が知られるようになり、2010年にアルバム『2010』をインターネット媒体のダウンロード音源としてリリース。それにボーナス・トラックをつけ、2011年1月12日、日本盤として初のCDアルバム『2011』(2011年)がリリースされた。



[アルバム(選)]
2011 (2011) (Powerpop Academy / XQER-1025)
 口ずさみやすいメロディに、安定した演奏。そして秀逸なコーラスに、まずは耳を奪われる。これがクリスチャン・フィリップスのほぼ一人多重録音だというのだから、恐れ入る。R&Bやジャズのコーラス・グループは常に不況とは無縁だが、70年代終わりから80年代にかけて、クイーンや10ccが切り開いた音楽を、これらのコーラス・グループが蘇らせたような錯覚すらうける。だが実に、これが一人の男の多重録音と、彼をバック・アップするドラム、そしてレコーディング・エンジニアから作られているのだ。まさに録音のマジック。日本盤のボーナス・トラック7曲は、特にこのコーラス・ワークの秀逸さを聴かせてくれる。全体を通して安心して聴ける音だ。ポピュラーミュージックは現在、かつてのジャズが辿ったように挑戦的な音を排除し、大人へと成長しつつあるが、まさにその象徴のような音が次々と溢れてくる。





[リンク]
 The Sonic Executive Sessions ... ザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズの公式英語サイト。
 The Sonic Executive Sessions ... ザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズのMySpaceのページ。
 Sonic-One Studio ... ティム・ハミルが経営するSonic-Oneスタジオの公式英語サイト。
 The Official Ultimate Eagles Web Site ... クリスチャン・フィリップスとライアン・アストンが参加するEaglesのトリビュート・バンド、Ultimate Eaglesの公式英語サイト。
 Power Pop Academy ... ザ・ソニック・エグゼクティヴ・セッションズの『2011』をリリースしたパワー・ポップ・アカデミーの公式日本語サイト。

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ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2011: Yoshifum! Nagata








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