ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ボーイズ・フロム・ザ・ヒル(BOYS from the HILL) 歌/英語、ウェールズ語
 「あの丘出身の少年たち」とは、丘陵地帯がその面積の多くを占める、ウェールズらしいバンド名だ。

 彼らは南ウェールズのスウオンジーでバンドを結成し、10年もの長い間、地道に活動してきた。彼らは、民謡(folk song)や伝統音楽(traditional music)を基盤に、強い社会的なメッセージを歌うことで、新しい民謡を作り上げる。そのため、ウェールズの伝統音楽シーンの中で最も革新的なバンドとも呼ばれる。

 メンバーは、アンディ・ジョーンズ(Andy Jones)(G&Vo)、クリス・ピットソン(Chris Pitson)(ブズーキ&シターン)、マーティン・リーモン(Martin Leamon)(メロウディオン、アコーディオン&ブズーキ)のトリオ編成だ。テレビやラジオの曲を手掛ける一方で、2001年にセルフ・タイトルのアルバムでデビュー。そのジャケットには、現代のウェールズの鄙びた村の様子がよく現れている。このアルバムは、批評家投票によるfRoots / BBCの「最上の2001年ワールド・ミュージック」(best World Music release 2001)に上位入賞を果たした。彼らはその後も精力的に活動し、ポルトガル、エストニア、フランス、アイルランドなどでもコンサートを行っている。

 



[アルバム(選)]
BOYS from the Hill (2001) (fflach:tradd / CD243H)
 自作曲の間に、インタールーどのごとく、ウェールズの伝統音楽が挿入された本作は、ウェールズの「暗さ」を感じさせる。その「暗さ」は、歌の題材である19世紀から20世紀のウェールズの政治状況が生み出した、社会的なひずみから来ているのかもしれない。1930年代の強制労働キャンプでの体験を歌った1曲目“Brechfa Jail. The Ballad of Ben Russ”や、西オーストラリアへの移住(恐らくパタゴニアのこと)を「事実上の死刑判決」とする2曲目、決して帰ることがないことを知りながらイングランドの軍隊に加わることを歌った9曲目(唯一のウェールズ語の歌でもある)など、熾烈極まりない。当然のように曲調はマイナー調(短調)がほとんどで、更にそこにケルト音楽然とした笛が、冷たい風のように漂い、まるで虐げられた民族の琴線に触れるように鳴り響く。その中で、最後に収められた伝承歌“Dark Eyed Sailor”の男女デュエットは、さわやかに響く。どこか、マイク・オールドフィールドの「オマドーン」の最後のバラードに通ずる安らぎがある。なお、ファーンヒルのケリ・マシューズが3曲にゲスト参加している。




[リンク]
 Boys from the Hill ... 公式サイト。




ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2003-2013: Yoshifum! Nagata








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