ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ファーンヒル(Fernhill) 歌/ウェールズ語
 イングランドはエセックス州出身のジュリー・マーフィ(Julie Murphy)(Vo)、ロンドン出身のアンディ・カッティング(Andy Cutting)(ボタン・アコーディオン)、ウェールズはスウオンジー出身のケリ・マシューズ(Ceri Matthews)(G,Cl & バグパイプ)、ジョナサン・ショーランド(Jonathan Shorland)(Winds & バグパイプ)のカルテット編成で結成された。バンド名は、スウオンジー出身の詩人、ディラン・トマスの詩集に由来する。2000年の時点でショーランドが脱退し、トリオ編成(左写真)となった。
 マーフィとマシューズの出会いと関係は深い。二人は、同じ大学の学友であり、卒業後は一緒に南ウェールズに移り住む。2人とショーランドは6人組のバンド、サイス・ヒューヴェゾッド(Saith Rhyfeddod)を結成し、ウェールズの音楽を演奏するが、バンドは解散。後に企画ものケルト音楽CDの制作に参加した。ここにカッティングも参加しており、その3人がレコード会社の勧めによって、96年に結成。彼らはこれまでにCa'nos(96年)、Llatai(98年)、『ウィリア』(Whilia)(2000年)、Hynt(2003年)を制作している。
 彼らの音楽は、ウェールズの伝統音楽に基づいている。しかしながら、そこに、マーフィのブリュターニュ音楽(註:ブリュターニュはウェールズと同じケルト系の民族だ)と、ウェールズの伝統音楽にはないアコーディオンなどが絡まり、一口で彼らの音楽を「ウェールズの伝統音楽」と評しがたい。強いて言うなら、「ウェールズの伝統音楽の新しい形」だろうか。それだけに、これからのウェールズ伝統音楽の形を垣間見ることができる。




[アルバム(選)]
Whilia (2000) (beautiful jo records / BEJO CD 30)
 ショーランドが脱退しトリオ編成となった彼らに、ティム・ハリス(Tim Harris)(ダブル・ベース)、カス・メウリグ(Cass Meurig)(フィドル)の2人を迎えて2000年の1月、2月に制作された。どの曲も完成度および演奏水準が高いダンス・ソングとなっており、ケルト音楽を好きな人へならば、安心して勧められる。全7曲のうち、6曲がウェールズの伝承歌だ。しかしながら、彼ら自身が編曲を行っているため、ウェールズ伝統音楽の土臭さがなく、清涼飲料水のようなさわやかさを受ける。特に4曲目“dawns o gwmpas”(「ぐるぐると回りながら踊れ」)の明るいダンス・ソングの軽快さは、彼らの音楽的な特徴をよく現していると思う。良い悪いではなく、好みで評価が分かれることだろう。なお、内ジャケットの歌詞カードには、歌詞の英語訳のみが印刷されている。




[リンク]
 fernhill ... 公式サイト。
 Beautiful Jo Records ... ファーンヒルがCDを出しているレーベル。オックスフォードに基盤を置き、民謡などの伝統音楽を配信している。
 ファーンヒル・ホーム・ページ ... 日本語の公式サイト。このページを書くにあたって、参考にさせていただいています。




ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2003: Yoshifum! Nagata








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