ウェールズを食べる
――ウェールズの料理あれこれ――

朝食
 普段、ウェールズの人たちはシリアルやフルーツ、トーストなど簡単なもので、朝食を済ますことが多いようだ。ここにあげたメニューは伝統的なものだが、ホテルやB&Bの朝食には欠かせないものばかり。

*イングリッシュ・ブレックファースト(English Breakfast)
・・・ 日本の朝食はファースト・フードに近い簡素なものだ。実際のイギリス人もシリアルだけなど、非常に簡素である。だがイギリスの“宿”で出される朝食はじっくりと食べる価値のあるものであるし、また、量も多い。私のように食の細い人間ならば、朝食をしっかり食べると、昼食が必要無いほどの分量だ。

朝の食卓風景
(撮影:2003年北ウェールズのB&B)
 まずはテーブルにつくと、宿の人から朝食の種類と飲み物を聞かれる。朝食の種類には、初めての時は「フル・ブレックファースト」とこたえよう。飲み物は、紅茶かコーヒーのいずれかから選ぶ。

 宿によって異なるが、大抵、オレンジかグレープフルーツなどのフレッシュ・ジュースやシリアル(コーンフレーク)が、数種類自由に選べるように、揃えられている。フレッシュ・ジュースで喉を湿らし、シリアルやヨーグルト、フルーツなどを食しながら、待つこと数分。薄切りのトーストと一緒に、直径30センチはあろうかという皿に、朝食が盛られて運ばれてくる。
イングリッシュ・ブレックファースト
(撮影:2002年中部ウェールズのB&B)
――クリックで拡大――
 皿の中身は、目玉焼き、ベーコン、ソーセージ、マッシュルーム、トマト、ビーンズだ。トマトは焼いてあるものが多かったが、最近では生トマトの場合もある。ビーンズは甘く煮た豆だと思えばいい。ベーコンは厚く、脂ぎっている。ソーセージは日本のそれに較べて、2回りも3回りも大きい。宿によっては、パンを油で揚げたものがつくこともある。これがフル・ブレックファーストである。
 いわゆる、イングランド流の朝食と見た目は代らない。しかし、中身が問題だ。ベーコンやソーセージがウェールズ産のものであった場合は、朝から舌が踊ることは請け合いである。

 なお、アイルランドでは全く同じ食事を「アイリッシュ・ブレックファースト」と呼ぶが、特別な場合を除いて、ウェールズでは「ウェルッシュ・ブレックファースト」とは呼ばない。ウェールズで食べても、「イングランドの朝食」なのである。


シリアル
(撮影:2004年8月ウェルッシュプールのB&B)


ブラック・プディングはウェールズの伝統食。
(撮影:2007年レクサムのB&B)


ウェルッシュ・ブレックファーストの一例<クリックで拡大>
ソーセージの代りにウェールズの伝統料理である、豚肉とリーキのナゲット及び
ブラック・プディングがついている(画面上部中央)
(撮影:2004年コンウィのB&B)


ウェルッシュ・ブレックファーストのいち例<クリックで拡大>
画面奥:ソーセージ、ブラック・プディング、揚げパン、ベーコン
手前 :トマト、ビーンズ、目玉焼き
(撮影:2011年レクサムのB&B)

*魚の燻製(kipper)
・・・ 鮭やマスが豊富なウェールズでは、朝食のメニューにそれらの燻製が入っていることもある。イングリッシュ・ブレックファーストに飽きた時や、軽く済ませたい時には最適のメニューである。
 シリアルやフレッシュ・ジュースなどが付くのは、イングリッシュ・ブレックファーストと変りはない。また、燻製といってもその身は柔らかく、火を通してから出されるので消化もいい。トーストも一緒に出されるので、燻製とトーストを交互に味わうと、湿った食感と乾いた食感がそれぞれ楽しめ、朝からリッチな気分になる。
 イングランドの宿では見かけないメニューなので、ウェールズを訪れたら一度は試してみたい。

 感覚としては、日本の民宿で朝食に出るアジの干物に近いか?



燻製の魚の数々(クリックで拡大)
(撮影:2007年9月4日、カーディフ市場にて)

*卵料理(Eggs)
・・・ フル・ブレックファーストの代りにスクランブル・エッグなどを、試してみるのも一興。ホテルでは、メニューにポーチド・エッグがあることもある。

*ラヴァブレッド(Laverbread)
・・・ ラヴァ(laver)とは、ウェールズの海辺の岩場で採れる海草である。この海草は、ウェールズで、特に南ウェールズの海沿いの町で有名だ。海草そのものは、小さく切ったものをバターで炒め、レモン汁で食べても美味。
 ここで紹介するのは、このラヴァを使ったパンのような揚げ物だ。ラヴァとオートミールを混ぜ合わせたものを小さくダンゴ状に丸め、平たく潰し、ベーコンを焼いた後のの油で揚げる。この揚げ物は、ベーコンと一緒に食卓に出される。朝食に出すのが普通だが、軽い夕食(supper)で出されることもある。


ラヴァブレッド(撮影:2011年8月、カーディフのホテルにて)


ラヴァブレッドの元となる海藻ラヴァ
(撮影:2007年カーディフ市場)





ウェールズ?! カムリ!
写真(*は除く)と文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2003-2013: Yoshifum! Nagata




主要参考文献
Anglesey The Food Island, (Menter Mon, 2002)
Davies, Evelyn, Cegin Aberdaron Kitchen, (St. Hywyn's [Trading] Ltd, 2002)
Smith-Twiddy, Helen, Celtic Cookbook, (Y Llolfa, 1970)
Favorite Welsh Recipes, (J. Salmon LTD)
Freeman, Bobby, Traditional Food From Wales, (Hippocrene Books Inc., 1997)
Williams, Margaret, The Smallest House Cook Book, (Gwasg Carreg Gwalch, 1992)
Williams, Rhian, Welsh Dishes, (Y Lolfa, 2000)
Yates, Annete, Welsh Heritage Food & Cooking, (Lorenz Books, 2006-2007)




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