ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ユカタン(Yucatan) 歌/ウェールズ語
 あまたのバンド/アーティストが現れる中で、ヴィジュアルや言動ではなく、音楽的な個性が光となって煌くのは、残念ながら稀だ。中でも最先端のテクノロジーを駆使したアーティスト/バンドとなると、その頭角すら現しづらい。だがユカタンは、その希少な例だ。このバンドこそ、筆写Yoshifum! Nagataが2007年の新人の中で最も推薦するバンドである。

 ユカタンはバラ(Bala)出身のディルイン・スルイド(Dilwyn Llwyd)(G &V o)(左写真)を中心としたバンドである。メンバーはスルイドの他、オシアン・ハウエルス(Osian Howells)(G)、リース・グリフィス(Rhys Griffith)(key)、カルイン・ジョーンズ(Carwyn Jones)(B)、ゲシン・エヴァンス(Gethin Evans)の5人。

 彼らの馴れ初めは、スルイドがスペインのカタロニアで美術を教えていた頃まで遡る。スルイドは当時、単身でカタロニアに渡っていたのだが、そこで現在のほかのメンバーと出会い、2006年にユカタンを結成するに至った。そしてデビュー・アルバムとなるYucatan (2007年)がアイスランドのバンド、シガー・ロスの協力の下で録音される。

 現在、スルイドはウェールズはカーナヴォンに戻り、スランデュノで美術を非常勤で教える一方で、ユカタンを含む様々なプロジェクトで活躍している。その一端が、2007年に行われた音楽イヴェントGwyl Gardd Goll(失楽園フェスティヴァル)である。

 ユカタンの音楽はウェールズの風景や歴史に影響を受けており、6世紀から7世紀のウェールズ語詩から題材をとっている。ここにエレクトロニクスと呼ばれるノイズを駆使した音楽あわせ、その結果、これまでのウェールズ音楽にない非常に美しい音楽が生まれたのだ。



[アルバム(選)]
Yucatan (2007) (recordiau slacyr / SLAC011)
 全9曲収録。ミニマルでエレクトロニクスな音を背景に、スルイドの声が茫洋と響く。エコー処理が非常に巧みで、その細部まで行き届いた音作りに、思わず聞き惚れてしまう。そして何りも、太古に通ずる言葉ウェールズ語と、現代テクノロジーの相性がことのほか良いのに驚かされる。ユカタンが目指した抽象的で壮大な音楽が、弦楽四重奏団の演奏と重なり、ウェールズの音楽と言う枠を超えて響いている。これが南の丘陵地帯ではなく、北の大地から生まれたことがウェールズの本来の懐の広さを感じさせる。





[リンク]
 MySpace.com - Yucatan。ユカタンのMySpaceサイト。


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ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2008-2013: Yoshifum! Nagata








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