ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ヤング・マーブル・ジャイアンツ(Young Marble Giants) 歌/英語
 結成は78年11月、カーディフにて。アリソン・スタットン(Vo)、フィリップ・モクサム(B)、スチュアート・モクサム(G & Org)からなるトリオで、1枚のアルバムと2枚のシングルを作成した。バンド結成当時はスタットンは若干18歳で、ウェールズ大学病院の歯科で看護師の訓練中だった。その彼女は当時受けていた影響として、「賛美歌、ディスコ、ザ・レジデンツ(前衛音楽のグループ)、マザーグース」あげている。

 またバンド結成初期には、“4人目”のメンバーがいた。彼はピート・ジョイスと言い、モクサムの従兄であった。実際に楽器は演奏していないが、ドラム・マシーンとリング・モジュレーター(※エフェクターの一種。ピッチを変えることも可能)を彼らのために作った。これにより、ヤング・マーブル・ジャイアンツ独自の音楽が生まれた。

 唯一のアルバム『コローサル・ユース』(Colossal Youth)(79年)は、78年11月から1年かけて制作された。残響を上手く処理したスカスカの楽器をバックに、ウェールズの初夏の海を思わせるような、スタットンの軽やかな声が響き渡るのが特徴だ。彼らはわずか1作でブライアン・イーノ、クラフトワーク、ルー・リード、デヴィッド・ボウイらに多くの影響を与えたが、80年にバンドは解散。

 2003年と2007年に再結成をし、2007年にはヘイ・オン・ワイ・フェスティヴァルに出演した。以後、定期的にヤング・マーブル・ジャイアンツとして活動している。



[アルバム(選)]
Colossal Youth (79)
 ドラムレス・トリオ編成のヤング・マーブル・ジャイアンツの唯一のアルバムとなる本作は、80年代に巻き起こったUKニューウェーブの音とも、いわゆるウェールズ・ポップスのそれとも、異なる。時にリズム・ボックスを使うこともあるが、彼らの音楽の基本は、色彩感溢れた、重過ぎないベースとひしゃげたギターが作る、スカスカの音空間だ。この残響音(エコー)を上手に処理した空間は、唯一無二のものだが、そこに紅一点のヴォーカル、アリソン・スタットンが絡むと、ウェールズの初夏を想像してしまうから不思議だ。数曲で聴かれる、ネジがゆるんだようなオルガンも面白い。94年にCD化された際には、ボーナス・トラックとして4曲追加収録された。

Colossal Youth (79-2007)(Domino Recordings / DNO 135)
 唯一残されたアルバム『コローサル・ユース』(79)に、2枚のCDを追加した3枚組の特別版。CD2にはシングルおよびコンピレーションIs The War Over?収録曲の10曲に、初期デモ録音を編纂したSalad Days(2000年)を収録。CD3には、名物DJジョン・ピールの番組に出演した時の演奏をおさめた、John Peel Session 1980となっている。従ってこの3枚組CDを入手すれば、ヤング・マーブル・ジャイアンツの音楽全体像がつかめるというもの。2010年の今聴いても十分新鮮な彼らの音を、存分に楽しもう。




[リンク]
 Cardiffians: the Young Marble Giants Web archive ... 英語ファンサイト。詳細なディスコグラフィーのみならず、2007年のライヴレポートまでかなり盛り沢山のサイト。




ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2003-2010: Yoshifum! Nagata








「ウェールズを感じる――ウェールズから響く音楽――」へ。
サイト・トップはこちら。