ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■マンチャイルド(Manchild) 
 カーディフを活動の拠点とする、マックス・オデル(Max Odell)とブレット・パーカー(Brett Parker)の男性デュオ。結成は1997年で、デビューは1999年。ユニット名は、ハービー・ハンコックの代表作のひとつから採られた。
 彼らは、ともに、イングランドのバッキンガム生まれ。保育園時代から友人で、DJコンビとして活動するようになってからは、ハウス、ヒップ・ホップからデジタル・レゲエまでをクラブでプレイ。そこから発展した彼らの音楽は、デトロイト・テクノにも通ずる強烈なアシッド・ハウスとなった。唯一のアルバム『アンタイド・ステイツ』(untied states)(2000年)は、本国よりも、ヨーロッパでヒットする。翌年に発表されたシングル、“Nothing Without Me”(2001年)は、UKチャートで40位に食い込む大健闘をする。2003年、マンチャイルドはその役目を終え、オデルとパーカーは新しいバンドを結成した。
 なお、映画『ヒューマン・トラフィック』で描かれていたが、カーディフではクラブ・ミュージックがひとつのシーンを形成している。実際に街中のCDショップの門をくぐると、クラブ/ヒップ・ホップ系のレコードが目立つほどだ。そのようなシーンから出たのが、彼らである。




[アルバム(選)]
Untied States (2000)(One Littel Indian Records / TPLP707CD)
 クラブのフロア全体を揺るがすような、非常に激しい、アシッド・ハウスが展開される。ハウスを基調としながら、ロックあり、ラップあり、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』(73年)のテーマ曲(註:作曲は、ラロ・シフリン)ありの、意欲作だ。ステレオフォニックスのケリー・ジョーンズや、セラピー?のアンディ・ケアーンスらをゲストに迎えて、制作されたことが、当時話題になったが、この音楽は彼らの個性をも包んでしまう。ラストの「ニュー・ロンドン」は、激しいリズムを持っているものの、夕暮れが似合いそうなアンビエントだ。これだけの内容を持ちながら、アルバム全体を通して散漫になっていないのは流石だ。ただし、フェアリー・コーステンがクラブ音楽を一掃してしまった後では、このアルバムには、少々の古臭さを感じてしまう。




[リンク]
 Manchild ... 公式サイト。



文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2003: Yoshifum! Nagata








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