ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ケンタッキーAFC(Kentucky AFC) 歌/ウェールズ語
 流行が一瞬にして世界を回ってしまう現在では、理論的には世界中の誰もが同じファッションに身を包むことは可能である。しかしどれだけ着飾ったとしても、その中身までは着飾れない。その人のアイデンティティにもなる民族性は、隠すことは出来ても消すことは出来ない。――ケンタッキーAFCは、まさにそのようなことを考えさせるバンドだ。北ウエールズ出身の、現在、最も注目すべき新人スリー・ピース・バンドの彼らは、アメリカ仕立ての洋服を纏いながら、その核には紛れもないウェールズの精神が宿る。それが彼らの独自性でもあり、人々をひきつける重大なる要素になっているのだろう。

 90年代初頭、二人の十代の若者、エンダフ・ロバーツ(Endaf Roberts)(G & Vo)とヒュー・オーエン(Huw Owen)(B & Vo)が学校で出会う。二人には、ラモーンズとアメリカのカントリー・ミュージックを好むと言う共通点があった。そして彼らは98年に、ザ・カカン・ワイ・エクスペリエンス(The Cacan Wy Experience)を結成。悪評を得て、その名を世間に知らし始めるようになるが、2000年になると活動停止となる。

 そして時間をかけ、ロバーツとオーエンは新しい計画練る。その二人にゲシン・エヴァンス(Gethin Evans)(dr)が加わり、バンドが2001年に結成される。そして彼らはケンタッキーAFCと名乗り、ライヴ活動をはじめる。

 そして2002年の秋、限定版5曲入りシングル“E.P.”をリリースする。この評判が批評家達の口にのぼると、たちまちこのシングルは売り切れ、2003年1月、彼らは次作のためにスタジオ入りする。そして2003年3月、2枚目のシングル“Boldlon”がr-benninレーベルよりリリースされ、2003年11月には3枚目のシングル“Outlaw / 11”をリリース。この年、早くもBBC最優秀新人賞に輝いた。勢いにのった彼らは、2004年には初のアルバム Kentucky AFC (2004年)をリリースした。そしてこの年には、ポップ・アワーズの最優秀シングル賞と最優秀ライヴ・バンド賞などを獲得。この最優秀ライヴ・バンドは一般からの投票で決まるが、そのことからも彼らの地元ウェールズでの人気の高さがうかがえようというものだ。現在も精力的に活躍中。筆者一押しの新人バンドである。






[アルバム(選)]
Kentucky AFC (2004) (Boobytrap / BOOBRECD010CD)
 なんともご機嫌なアルバムである。まず、リズムが良い。スタジオ録音だと言うのに、ライヴ感溢れるグルーブが弾け跳んでいる。まるでメンバーが目の前で飛び跳ねながら演奏しているようだ。その音がまたユニークだ。音にアメリカの香りを漂わせながらも、その実、ウェールズ語の歌詞とメロディをここにあわせることで、非常にユニークな唯一無二の音楽が生まれている。つまりアメリカのロックン・ロールという洋服を纏いながら、その芯にあるのは紛れもないウェールズそのものである。10曲目はまさに彼らの真骨頂であるが、続く11-13曲目ではイギリスのロックでしか醸しえない独特の闇をのぞかせる。傑作。





[リンク]
 Kentucky AFC ... ケンタッキーAFCの公式サイト。
 Complete Control Music ... ウェールズ出身の若手ミュージシャンを支援する英語/ウェールズ語サイト。ケンタッキーAFCの公式バイオグラフィーなどがある。

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ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2005: Yoshifum! Nagata








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