ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■ハイブリッド(Hybrid) 歌/英語
 ハイブリッドはプログレッシヴ・ブレイクビーツの機械的なサウンドと、オーケストラなどのアコースティック・サウンドをかけ合わせた、まさに「混血の」(hybrid)な音楽を演奏する。彼らのデビュー・アルバムである『ワイド・アングル』(Wide Angle)(99年)は、彼らの所属するDistinct'ive Recordsの出資元であるAVEXレーベルを通じて日本ではリリースされ、クラバーの間では当時かなりの話題となった。

 南ウェールズのスウォンジーを活動の基盤とするハイブリッドは、DJのクリス・ヒーリングス(Chris Healings)(70年6月22日生まれ)とリー・マリンス(Lee Mullins)(72年3月26日生まれ)が90年代初頭にスウォンジーのクラブで知り合ったことに始る。そこに自宅録音にはまっていた作曲家のマイク・トルゥーマン(Mike Trueman)(74年10月12日生まれ)が加わり、結成された。

 当初は他人の曲をリミックスすることで活動していた彼らだったが、『ワイド・アングル』(Wide Angle)(99年)でアルバム・デビューする。このアルバムは全世界でミリオン・セラーとなり、一躍、彼らの名は世界中に知れ渡ることとなる。その成功のおかげで、数々のリミックス依頼が舞い込み、ついには、アメリカ人アーティストのMobyの9週間におよぶアメリカ・ツアーのサポート(いわゆる前座)を務めるまでになる。『ワイド・アングル』が日本ではエイベックスから発売されたからみか、浜崎あゆみの曲のリミックスも手掛けている。

 2003年には2作目Morning Sci-Fi(2003年)をリリースし、現在も精力的に活躍している。



[アルバム(選)]
Wide Angle (99) (Distinct'ive Records / DISNCD54 )
 夢を見るようなヴォーカルのジュリー・クルーズを始め、数多くのゲストを招いて制作されたデビュー・アルバムでありながら、非常に、統一感がある。それは、メンバーの1人が作曲に従事していることと、全体を貫く、その芯に骨太な力強さを持つ打ち込みリズムのためだろう。小手先の細かさで誤魔化さない、いわばマッチョで男性的なリズムが、このアルバムの統一感をもたらしているのだ。一方で、傑作「フィニッシュド・シンフォニー」のロシア交響楽団による演奏は、音に温かみを与えており、まさに、機械と人間の「ハイブリッド」な音楽となっている。なお、4曲目に収録された「ビーチコマ」は、スウォンジーの朝の海岸の風景を描いたものだそうだ。日本盤にはボーナス・ディスクとしてアムステルダムでのライヴ音源が収録されているが、ここでは、アルバム以上に骨太なリズムと、会場の空気を自由に漂うヴォーカルが堪能できる。

Morning Schi-Fi (2003) (Distinct'ive Records / DISNCD100 689783610028 )
 SF映画のようなSEでアルバムは幕を開け、ディレイのかかった歌が徐々に緊張感を高める。そしてついにはその荒涼としたアルバム・ジャケットからは想像できないほど、機械的でハードなデジタル・ビートで彼らは押して来る。中でも11曲目“Out of the Dark”は強烈。アルバム全体を通じて、予想以上に歌が占める比重が大きいが、骨太なシンセ・ベースとドラムのおかげでデジタルな印象を強く受ける。なお付属のDVDではライヴ映像の他、インタビューやツアーの裏側も垣間見ることができる(字幕なし)。
 なお1曲目の前にシークレット・トラックがあり、ここではオーケストラとデジタル楽器が融合が成功している。クラブ音楽という見方さえしなければ、アルバム中最もストーリーに富み、革新的で素晴らしい曲と言える。





[リンク]
 Distinct'ive Records ... ハイブリッドが契約しているレコード・レーベル。公式バイオグラフィーあり。
 hybrid / for fans of hybrid ... ハイブリッドおよびハイブリッドのファンを支援するための英語サイト。ハイブリッドに関する様々なページがあり、非常に充実している優良サイトだ。




ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2003: Yoshifum! Nagata








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