ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽2:クラシックおよび現代音楽――



■カラドッグ・ロバーツ(Caradog Roberts) 歌/英語&ウェールズ語
 ウェールズは賛美歌の合唱で知られる。同時に、この伝統は多くの賛美歌作曲家を生んだ。中でも著名なのは、パンタケランとアン・グリフィスズだが、その名に並ぶのがこの近代から現代にかけて生きた、カラドッグ・ロバーツである。

 カラドッグ・ロバーツは1878年10月30日、デンビーシャーのロースサネルックハリゴグ<ローススラネルックハリゴグ>(Rhosllanerchrugog)に生まれる。幼い頃から音楽的才能を示し、アイステズヴォッドの地方大会で賞を勝ち得ている。また一説によると、16歳までにベートーベンのピアノソナタ全曲と、バッハのフーガ全曲を弾くことが出来たという。

 それにも関わらず、カラドッグは生計を立てるためか、3年間に渡り、大工修行を受けている。しかしながら音楽を学びたいとの希望は捨てきれず、ピアノとオルガンを学び、ついに1894年にレクサムの近くのポンキアイ(Ponciau)の会衆派教会でオルガン奏者としての職を得る。

 1904年にはカラドッグは地元ロースサネルックハリゴグ<ローススラネルックハリゴグ>に戻り、そこの会衆派教会でオルガン奏者兼合唱隊指揮者に任命される。その一方で賛美歌の作曲家としても活躍し続けた。カラドッグの代表曲としては、“In Memoriam”や“Rachie”、“Bore'r Pasg”などがあげられる。

 カラドッグは演奏者/作曲家として活躍する一方で、音楽を学び続けた。1911年にはウェールズ人としては最年少で、オックスフォード大学で音楽の博士号を修得、1914年から1920年にはバンゴール大学の役員を務めている。

 1935年3月3日、没。その亡骸は故郷ロースサネルックハリゴグ<ローススラネルックハリゴグ>の墓地に葬られた。





[アルバム(選)]
Cantorion Cynwrig (1977-2003) (Sain / SCD2391)
 ブライアン・ヒューズ指揮、カンウリグ合唱団(Cantorion Cynwrig)による、カラドッグ・ロバーツの賛美歌ばかりを集めたのがっ本作だ。録音は1977年、フリントシャーの聖ポールの教会にて。2003年のCD化に際して、リマスターが施されている。代表曲“In Memoriam”(10曲目)をはじめ、これぞ「ウェールズの合唱!」と思わず言葉が口を突いて出てくるような、暗さに満ちた作品が多く並ぶ。だが、単に暗いだけではない。その歌とメロディに内包された力強さ、そして、そこから湧き上がる希望にも似た明るさが、何ともウェールズらしい。15曲目“Rachie”は、やはり白眉。有名な伝承歌「ハルレックの男たち」を思い起こさせる。





[リンク]
 Caradog Roberts - Hymn Time簡単なバイオグラフィーと2曲、譜面とMIDIファイルがある。

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ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2013: Yoshifum! Nagata








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