ウェールズを感じる
――ウェールズから響く音楽1:ポピュラー・ミュージック――



■アサン・アン・ア・ヴァン(Allan Yn Fan) 歌/ウェールズ語
 アサン・アン・ア・ヴァンはウェールズ伝統音楽を奏でる、21世紀期待のバンド。メンバーの5人が5人揃ってマルチ・インストルメンタリストという、実に珍しいバンドである。既にヨーロッパでは、その名声を獲得しているとか。

 アサン・アン・ア・ヴァンを構成するのは、ジェフ・クリップス(Geff Clipps)(g,b & keys)、ケイト・ストルドウィック(Kate Strudwick)(flt, whistle, recorder and woods)、メリエル・フィールド(Meriel Field)(Vln & vo)、リンダ・シモンズ(Linda Simmonds)(mandolin & bodhran)、クリス・ジョーンズ(Chris Jones)(flt, accordion & whsitle)の5人。ここに挙げた楽器だけでも(プロフィールで公表されているものの一部)、メンバーの腕達者差がわかるだろう。様々な楽器を引き分ける天才も世の中にはいるが、これだけマルチ・インストルメンタリストが揃ったバンドは珍しい。

 アサン・アン・ア・ヴァンの結成は意外に古く、1996年。当初は主にライヴ演奏を中心に活動し、2003年にOff The Mapでレコード・デビュー。続くBelonging(2006年)、Trosnant(2009年)と順調に活動を続け、2010年にはハープ奏者(レコード・レーベルが同じ)のDelyth Jenkinsをゲストに向えてLle Arall / Another Place(2010年)をリリース。2012年にはPwncoを上梓している。アサン・アン・ア・ヴァンはウェールズやイギリスでの著名なフェスティヴァルはもとより(2012年の聖デヴィッドの日には、カーディフで演奏している、ドイツ、チェコ、フランスなど、ヨーロッパでも精力的な演奏活動を繰り広げている。



[アルバム(選)]
Trisnant (2009) (Steam Pie Records / SPCD1013S)
 全12曲。牧歌的な曲で緩やかに幕を開け、ついで、暗い曲へと突入する。ということは、存分にウェールズ伝承歌を堪能できるというわけだ。暗い9曲目や、次第に盛り上がっていくメドレーの11曲目のようなインストルメンタル(器楽曲)も良いが、メリエル・フィールドがリード・ヴォーカルをとる3、5、8曲目は白眉の出来。特に5曲目の、ゆるやかなリズムにのって、どこまでも伸びていくような歌声は、何度聴いても気持ちいい。一方で、7曲目のような軽快なダンス・チューンでも、メリエルは活躍している。

Lle Arall / Another Place (2010) (Steam Pie Records / SPCD1014S)
 ハープ奏者Delyth Jenkinsをゲストに迎えたミニ・アルバム(全5曲)。1曲目から優しく爪弾かれるハープが登場し、程なくしてメリエルの澄んだ歌声が響く。そしてそのメロディを、ホイッスルが引き継ぎ、展開していくが、ウェールズ伝承歌ファンならばこれだけでも悶絶必至。意外にも2曲目では、ウェールズ伝承歌独特の暗さに、ハープがあっている。4曲目でタイトル曲は、Delyth Jenkinsのオリジナル曲をJenkinsとアサン・アン・ア・ヴァンで編曲し、曲の生命を吹き込んだもの。実にこの編曲が見事で、暗さを持ちながら繊細な曲へと昇華している。





[リンク]
 Allan Yn A Fan公式英語サイト。

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ウェールズ?! カムリ!
文章:Yoshifum! Nagata
(c)&(p) 2013: Yoshifum! Nagata








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